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サロメ

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退廃の世紀末ロンドン。二人の天才を、“運命の女”が悲劇へといざなう

「私と一緒に地獄に堕ちよう」
「不謹慎」「不健全」「奇怪」「退廃的」……世紀末、すべては賛辞の裏返し。
その悪徳とスキャンダルで時代の寵児となった作家オスカー・ワイルドと、
イギリス画壇に彗星のごとく現れた夭折の天才画家、オーブリー・ビアズリーの愛憎を描く!

『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』に続く、
原田マハの野心的傑作長篇。

215 pages, Kindle Edition

Published January 16, 2017

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About the author

Maha Harada

73 books27 followers
原田 マハは、日本の小説家、キュレーター、カルチャーライター。東京都小平市生まれ。小学6年生から高校卒業まで岡山県岡山市育ち。岡山市立三門小学校、岡山市立石井中学校、山陽女子高等学校、関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。マリムラ美術館、伊藤忠商事、森ビル、都市開発企業美術館準備室、ニューヨーク近代美術館に勤務後、2002年にフリーのキュレーターとして独立。

2003年にカルチャーライターとして執筆活動を開始し、2005年には共著で『ソウルジョブ』上梓。そして同年、『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞、特典として映画化される。mahaの名でケータイ小説も執筆する。

ペンネームはフランシスコ・ゴヤの「着衣のマハ」「裸のマハ」に由来する。兄は、同じく小説家の原田宗典。

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Displaying 1 - 3 of 3 reviews
Profile Image for Isabella Dionisio.
2 reviews2 followers
January 7, 2018
オスカー・ワイルドの作品もオーブリー・ビアズリーの挿絵も大好物なので、楽しみにしていた一冊だが、期待通り面白く、あっという間に完読。
史実に基づいたフィクション。オスカー・ワイルドの『サロメ』をさらに印象づけたオーブリー・ビアズリーの挿絵にまつわる魅惑的な空想、ビアズリーの絵が象徴するような、オーブリーの姉、メイベル目線で語られた物語。聖書のサロメも、この物語の中のみんなもどこか狂気を帯びており、誰も幸せになれない切なさが残る。所々挟まれている黒いページは舞台の幕なのか、塗りつぶされた絵なのか、登場人物の腹黒さの表われなのか、作中に漂う暗闇をいっそ深くしている。
しかし、原田マハの型にはまったパターン、研究者やキュレーターがふいに新しい何かを発見して過去にタイムスリップ、というお決まりコースになってしまっていることが残念。想像を掻き立てる素材なのに、そのお馴染みの構造から脱却できていないのは惜しい…。
Profile Image for Erika.
2,836 reviews88 followers
June 4, 2021
友人が、わざわざビアズリーの「サロメ」の絵葉書で「こういう本読んだの」と教えてきたので、読んでみた。
私は西洋史学研究室に所属していたし、19世紀末のロンドン/パリのデカダンス/アーツアンドクラフツ大好きだし、V&A美術館もサヴォイもウィリアムモリス好きだし、ワイルドの作品(The Importance of Being EarnestLady Windmere's Fan)が好きだし、ワイルドの言ったと言われているQuoteの数々も大好きだし、ビアズリー作品には10才で「エクスカリバーを水に投げ入れるベディヴィア」(母が買った)に出会ってから惚れ込んでるし、ロンドンにも馴染みがある。
それに、「現代に有名な作品の誕生秘話を、現代と当時の2重の時系列で語る」というタイプの物語に弱い。

条件としてはこの作品もドンピシャのはずだった。

けれど、
・連載された作品のせいか、重複する描写が多い→それもあって、ストーリー進行が非常に遅いし、描写がしつこく感じる
・ビアズリーの作品の素晴らしさを言葉を尽くして説明しているけれど、まさに「百聞は一見に如かず」。ビアズリー作品をそこそこ知っている+大好きな私でさえ、「言葉で説明されただけじゃわからないよ」と思ってしまう。どちらかというと、原田マハが「こういう風に感じろ!」と見方を押し付けてくるように感じる。まさにTell not showになってる。
→「異端」「衝撃」と散々言葉で描写されているのは、ビアズリー作品を21世紀の私たちが見てもそこまで「異端」とは感じないから、「19世紀末の人々はこう感じたはず」と教えようとしてくれてるのかもしれない、とちょっと考えて思った。映画なんかの視覚メディアだったら、登場人物の表情や音楽で「異端」感を演出できるけど、文章だけではそうは行かない。難しい。(でも、本当に上手い人なら、Show not Tellできると思う)
・19世紀末の英国では、同性愛は法律違反だった。そして、宗教的にも、道徳的にも禁忌だった。それは分かる。けれど、頭でわかっているのと、感情として理解するのとは違う。登場人物たちが「禁忌・禁断・頽廃的」と恐れおののく様子が、やはりTell not Show。わざわざ描写しないで、シンプルに描写することで読者に読み取らせるような描かれ方じゃ無い。「そんな大騒ぎしなくても」と思ってしまう。物語冒頭で同性愛だとどのような社会的影響があるか、を描いた方が、「ダメだとわかっていても芸術的に惹かれてしまう」的描写に真実味が生まれたんじゃ無いか。
・ビアズリーの姉、主人公メイベル。女の武器を使って、周りを操ろうとする。その気概は好き。けれど、中途半端だし、キャラとしてもつまらない。もっと厚みのあるキャラだったら共感できるのに。
・「現代」パートに登場する人々の無意味さ。物語の導入(題材に馴染みのない読者の為のcrash course)としては必要なのかもしれないけれど、それ以外の存在感/意味なさすぎ。「実は研究者と個人的に関わりがあった」的な話にするなら、歴史的事実と完全フィクションをうまく組み合わせて面白いのに、この登場人物たちは、題材に一切関係がない。「ビアズリー/ワイルドの研究者」というだけ。だったらニュース記事を引用する形でも良かったんじゃないの?
[サヴォイのサロンという場所は、(ないとは思うが)映画化する時には、「オペラ座の怪人」の映画のような、「同じ場所だけど時が遡る」という演出ができるな。「オペラ座の怪人」のあのシーン、唯一好きなシーンだ。]
・結末が消化不良
全体的に、Show not Tellの真逆。読者に感じさせるのでなく、読者に「こう感じろ」と言ってくる書き方。
…ということで、イマイチ。
(But 真っ黒のページはいい考えだった。描かれる年があっちこっちいくので、場面転換がわかりやすい。)

ビアズリー好き、と言っておきながら、私は彼の姉が結構有名な女優だったという事を知らなかった。(まぁ、作品が好きなだけで、彼本人に興味はなかったので当然かもしれないけれど)
そういう意味で、興味深い情報を得られた。
けれど、物語としては正直つまらないし、爪が甘いし、折角いい題材なんだからもうちょっと深く掘り下げられたんじゃないの?と思う。
…題材が私の好きな「ロンドン」「ビアズリー」「19世紀」じゃなくて、江戸時代の歌舞伎の話とかだったら、全く読む気にならない。

冒頭10ページくらいはロンドンに戻ったような気分で、頭の中で「映画化」しながら読んでいたが、最後のページをめくる時にはその高揚感は一切無くなっていた。
この「裏切り」、考えれば考えるほど残念なので、星2つ(初めは3つにしたけれど、内容がなさすぎる。表紙のビアズリーの絵だけが救い)


以下本書の感想ではないメモ:
この本のおかげで、友人と「どういう作品が好きか」という話で盛り上がれたのは良かった。
彼女は、「The Happy Prince」や人魚姫を読んで、「こんな悲しい話があるなんて!」と衝撃を受けたらしい。私はというと、前者は「こんなに尽くしても、尽くして貰った方は何も知らずにのうのうと生きているんだ」「自己犠牲精神…美しいかもしれないけれど好きじゃない」と無力感と怒りを感じる子供だった。人魚姫に至っては、「知ってる物語(ディスニー)と結末が違う…どっちがオリジナルだ?盗作か?版が違うのか?」と混乱した。
この事から見ても、私の友人は心の底から優しい女性なんだと推察できる。
対する私は、人間嫌いがより明確に:私が「小さい時大泣きして眠れなくなった本」は、「ごんぎつね」や、「公園に居た仲良しの回転木馬達が居なくなって(撤去か移築)悲しみに暮れる野良猫」の話(題名がどうしても思い出せない)だ。今思い出しただけでも泣ける。(友人が「ごん、お前だったのか…」と言ってきて、涙腺がやばかった。)
人間・人間もどきが主役の悲しい話は、「コミュニケーション取れよ」と思ってしまうのか、怒りを感じやすい。
けれど、動物が主人公だと、人間社会のルールや人間の言っている事が全くわからない事もあって、コミュニケーション云々の話ではない。ただただ「状況がわからずに困惑し悲嘆に暮れる」事になる。それがかわいそうなんだ。もしくは私が人間より動物が好きってことかも。
Profile Image for hana.
128 reviews10 followers
March 24, 2022
史実とフィクションの交ざりよう、メイベルの語りと彼女がサロメになってゆくかのように進むのが好き。
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